230428

4月28日(金) 帰り道

4月の後半は寒の戻りと夏の気配が行きつ戻りつな感じで、冬のコートと薄手のジャケットを交互に着るような気候。すごく寒かった日、いつもは熱すぎる温泉が、身体の芯までつよく届いてきて感極まる思いがした。暮らしているこの古い家は冷え込みが激しく、今から真冬のことを想像して震えるのだけれど、一日のうちにからだの奥底からあったまる時間が15分あるだけできっとやっていけるだろうと信じられる。温泉への信頼が日々膨らむ。寒かった日の翌日、誰かが水をたくさん入れてぬる湯になった湯船に、ぬるいわあ、ぬるいわあ、と声を揃える近所のおばあちゃんたちのように、この熱さから離れられなくなってゆくのだろうな。温泉を上がって帰路に着く。西に聳え立つ山並みと平行に歩く。夕暮れの銀色に放たれた光、空の変幻色、緑の陰影。山側の景色を見るのを毎日楽しみにしている。引力のある景色。目を閉じて羽ばたけば、すぐにあの山のてっぺんまで飛んでいけそうだ。信号待ちをしていると、船の汽笛が聞こえてくる。山から流れる空気と海の気配が街中で混ざって満ちている。引っ越してきて、ひと月が経った。ここで生活が回っていく。